FSSC22000監査対応の経験、九州食品工場の品質管理転職で評価される理由
- 2021年6月のHACCP完全義務化(厚生労働省)以降、九州食品工場では認証取得が進み監査対応経験が転職で重視される傾向にある。
- 内部監査は年2回以上、サーベイランス審査は年1回、更新審査は3年に1回という一般的な運用サイクルを理解しておくと経験を語りやすい。
- 是正処置(CAPA)の記録・進捗管理まで語れる経験は、監査に立ち会っただけの経験より書類選考で評価されやすいと山根は感じている。
「山根さん、うちの工場は去年FSSC22000を取ったばかりで、監査のときは検査員に付いて回っただけなんです。こんな経験、職務経歴書に書いていいんでしょうか」
結論から言うと、書いていい、というよりむしろ書くべきだと僕は考えています。厚生労働省が2018年6月13日に公布した改正食品衛生法により、2021年6月1日からHACCPに沿った衛生管理が完全義務化されました。この流れと並行して、焼酎・明太子・農産加工が集積する九州の食品工場では、取引先の要求や輸出対応を背景にFSSC22000やJFS規格といった認証取得に動くところが増えています。その結果、監査対応の経験そのものが品質管理職の採用面接で確かめられる項目になっている、というのが僕の実感です。
先ほどの方は、面談の中でもう一段掘り下げて聞くと、実は監査当日に外部審査員から指摘された「冷蔵庫の温度記録の欠落」について、是正報告書を自分で起票し、30日以内に工場長の承認を得て提出まで担当していたことがわかりました。「付いて回っただけ」という自己評価と、実際にやっていたことの間に大きな差があったわけです。この差を埋める作業こそ、今日お話ししたい内容です。
0. 「立ち会っただけ」と「担当した」の間にあるもの
監査対応の経験を聞かれたとき、多くの方が「立ち会っただけです」と答えます。ですが実際に話を聞いていくと、記録の不備を指摘された箇所を自分で確認し直したり、監査員からの質問に自分の持ち場について説明したりと、何かしらの役割を担っていることがほとんどです。九州の食品工場で品質管理職の面談に同席してきた僕の体感で言うと、この「実は担当していた部分」を言語化できるかどうかで、書類選考の通過しやすさに差が出ている印象があります。
1. なぜ監査対応の経験が問われるようになったのか
背景にあるのは二つの動きです。一つは厚生労働省が主導したHACCPの完全義務化(2021年6月1日施行)。もう一つは、国際的な食品安全マネジメントの枠組みが国内に広がってきたことです。2000年に設立されたGFSI(Global Food Safety Initiative)がFSSC22000などを承認スキームとして認定し、国内では2016年設立の一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)がJFS規格の運用を始めました。行政と民間、両方の動きが「記録に基づく衛生管理」という同じ方向を指しているのが、この分野の特徴だと思います。
九州は焼酎・水産加工・農産加工の集積地であり、大手小売や商社との取引条件として認証取得を求められる工場も増えてきました。認証を取得すれば終わりではなく、年に一度のサーベイランス審査、三年に一度の更新審査が続きます。つまり監査対応の実務は、認証取得後も工場の日常業務として続いていく、ということです。ここに人手が要る、というのが採用需要が高まっている理由の一つだと僕は見ています。
2. 監査対応の経験を4つに分解する
監査対応と一口に言っても、中身はいくつかの役割に分かれます。整理すると次のようになります。
| 監査の種類 | 頻度の目安 | 関わり方の例 |
|---|---|---|
| 内部監査 | 年2回以上 | チェックリストに基づく現場確認、記録の突き合わせ |
| サーベイランス審査(外部) | 年1回 | 審査員への案内、質問への回答、是正報告の提出 |
| 更新審査(外部) | 3年に1回 | 初回審査に近い規模の実地確認、文書一式の再確認 |
この表の中で、転職市場での評価に直結しやすいのは「是正報告の提出」に関わった経験です。指摘を受けてから改善策を実行し、記録として残し、期限内に報告するという一連の流れは、単に案内役を務めるより実務力が問われる部分だからです。指摘から是正報告までの期限は、僕が見てきた範囲では30日以内というケースが多い印象です。この期限感覚を持っているかどうかも、面談で自然と伝わってきます。
3. 転職市場でどう見られているか、体感値で見る評価ポイント
九州の食品工場の品質管理職の面談に同席していると、監査対応について掘り下げて聞かれる場面はおおよそ6〜7割程度あるというのが僕の体感値です(母集合は、これまで僕が同席してきた九州の食品工場の品質管理職候補者の面談です)。聞かれる内容は「認証の種類」よりも「どこまで自分でやったか」に集中する傾向があります。具体的には、指摘事項に対する是正処置の起票経験があるか、監査員からの質問に自分の言葉で説明した経験があるか、この二点です。
逆に言うと、認証名だけを並べて「FSSC22000の監査に立ち会いました」とだけ話すと、面接官からは「では具体的にどの部分を担当されましたか」と重ねて聞かれることになります。この質問に答えられないと、経験としての評価は伸びにくい、というのが僕の観察です。
4. 職務経歴書での言語化、Before/Afterで見る違い
実際にどう書けば違って見えるのか、二つの書き方を比べてみます。
Before:「FSSC22000の外部審査に立ち会い、監査対応を経験した」
After:「FSSC22000サーベイランス審査において、冷蔵設備の温度記録に関する指摘を受け、是正処置書を起票。原因分析から再発防止策の実行までを担当し、30日以内に是正報告を提出した」
Beforeの書き方では「立ち会った」という受け身の表現にとどまっていますが、Afterでは「起票」「担当」「提出」という自分が主体となった動詞が並びます。この違いが、書類選考での印象を分けると僕は考えています。認証の名前を並べることよりも、指摘から報告までの一連の流れをどれだけ自分の言葉で再現できるかが問われている、ということです。
5. 陥りやすい失敗とその対処
面談でよく見かける失敗が三つあります。一つ目は、監査に同行しただけの経験を「監査対応の経験あり」と書いてしまうケースです。担当した範囲が曖昧なまま面接に臨むと、深掘りの質問に答えられず、かえって評価を下げてしまいます。二つ目は逆に、実際は是正処置の起票まで担当していたのに「大したことはしていない」と謙遜しすぎて、経歴書に何も書かないケースです。冒頭で紹介した方はまさにこのパターンでした。三つ目は、是正処置の「その後」を追えていないのに「対応できます」と言い切ってしまうケースです。指摘への一次対応だけでなく、再発防止策が実際に機能したかどうかの確認まで含めて語れると、経験の厚みが伝わりやすくなります。
対処法としては、まず自分が関わった監査を一件思い出し、指摘事項・自分の役割・是正報告までの流れを時系列でメモしてみることをおすすめします。これだけで、職務経歴書に書ける具体的な文章がひとつ増えるはずです。
(結論)
HACCPの完全義務化を起点に、九州の食品工場では認証取得の動きが広がり、監査対応の経験は品質管理職の転職市場で確かに重視されるようになっています。ただし評価されるのは「認証の種類」ではなく「指摘から是正報告までを自分がどこまで担ったか」という中身です。立ち会っただけの経験を過大に語る必要はありませんし、逆に担当していた部分を謙遜して隠す必要もありません。まずは自分が関わった監査を一つ思い出し、役割を時系列で書き出してみてください。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. 監査対応の経験がないと品質管理職への転職は難しいですか?
結論、必須ではありませんが有利にはなります。九州では2021年6月のHACCP完全義務化以降、FSSC22000やJFS-Cなど認証取得を進める食品工場が増え、監査対応の経験がある人材への評価は高まっています。ただし経験がなくても、日常の記録管理や是正の考え方を理解していれば選考でカバーできる余地はあると僕は考えています。
Q. FSSC22000とJFS規格、経験としてどちらが評価されますか?
結論、規格の種類そのものよりも監査対応の中身の解像度が評価されます。FSSC22000は2000年設立のGFSI(Global Food Safety Initiative)が承認する国際スキームで、JFS規格は2016年設立の食品安全マネジメント協会(JFSM)が運用する国内発の規格ですが、どちらも内部監査・是正処置・文書管理という共通の実務があり、そこを具体的に語れるかが問われます。
Q. 監査対応の経験を職務経歴書でどう書けばいいですか?
結論、『立ち会った』ではなく『何を担当したか』を書くことです。是正処置の起票・進捗管理、監査員への説明対応、記録の是正など担当範囲を具体的に書くと、監査に同行しただけの経験と区別されて評価されやすくなると僕は感じています。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。